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§植物栄養学の先達たち-2-
テオドール・ド・ソシュール
-植物生理学の基礎を築いたスイスの化学者-
京都大学名誉教授
高橋 英一
§レタスにおけるマルチ2作穫施肥技術について
JAあわじ島榎列支所
営農主任 三木 浩介
§肥料の常識・非常識(7)
越野 正義
京都大学名誉教授
高橋 英一
ニコラス-テオドール・ド・ソシュール(Nicolas-Theodore de Saussure 1767-1845)は1767年10月14日,スイス,ジュネーヴのソシュール家に生まれました。ソシュール家は代々学者を輩出した名家です。
テオドールの祖父ニコラス・ド・ソシュール(Nicolas de Saussure 1709-1790)は農学者で,農学を人間にとってもっとも必要な科学と考えていました。父のオラス-ベネデイクト・ド・ソシュール(Horace-Benedict de Saussure 1740-1799)は数学者,物理学者,地質鉱物学者,植物学者で,アルプス探検の草分けとして有名な人でした。彼は30年以上にわたるアルプスの地質学的研究の成果をまとめた大著「アルプス旅行記(Voyages dans Alpes)」で,地質学(geology)という言葉を科学用語に導入した人であり,毛髪湿度計や電位計の発明者でもあります。またその曾孫のフエルデイナンド・ド・ソシュール(Ferdinand de Saussure 1857-1913)は言語学者で,構造主義の先駆者としてその名前は現在でも良く知られています。
テオドール・ド・ソシュールの業績の一つは,植物の生長(体重の増加)は葉が行う炭酸ガスの同化によることを明らかにしたことですが,それは何人かの先人による気体の生理化学の仕事の上に築かれたものです。
気体の概念は前回紹介したように,17世紀の中ごろヴァン・ヘルモントが導入したものです。彼は62ポンドの木を燃やして僅か1ポンドの灰しか得られなかったことから,残りの61ポンドは目に見えない「木の精(spiritus silvester)」に変えられたと考え,これに”chaos=gas”という名前を与えたのでした。
大昔から知られていた気体として大気がありますが,その正体は中々分かりませんでした。ところが18世紀後半になって表2-1に示したように,炭酸ガス,水素ガス,酸素ガス,窒素ガスが相次いで発見されました。そしてそれらのガスの性質とくに生物に対する影響-生理作用に大きな関心が集まりました。

イギリスの非国教教会の牧師であったプリーストリー(Joseph Priestley 1733-1804)は,1767年頃から気体の研究にとりかかりましたが,1771年になって燃焼や呼吸によって汚された空気を植物が浄化することを発見しました。
ガラス鐘の中にネズミを閉じ込めておくとネズミは間も無く死んでしまうが,この中に鉢植えのハッカを入れておくと,ネズミは何時までも生きていました。
さらに1774年,彼は燃焼と呼吸を助ける新しい気体(酸素)を発見しましたが,この気体が植物の浄化作用に関係していることには思い至りませんでした。
スエーデンの薬剤師シェーレ(Carl Wilhelm Scheele 1742-1786)はプリーストリーのハッカの実験を知り追試をしましたが,植物は空気を浄化せず呼吸に役立たないものにするという全く反対の結果を得ました。
シェーレもプリーストリーと同じ気体(酸素)を発見しますが,二人とも植物はどんな条件で空気を浄化し,どんな条件で悪くするかということを明らかにしませんでした。
これを明らかにしたのはオランダの医師インヘンハウス(Jan Ingenhousz 1730-1799)でした。彼もプリーストリーの植物による空気の浄化についての実験に興味を持ち,1779年直接プリーストリーに会って実験の内容を詳しく聞きました。そして直ちに植物実験にとりかかりました。
彼は多年生の水草(タチジャコウソウの類)の緑の葉のついた小枝を,水の入ったガラス容器に入れ,逆さにした漏斗で蓋をし,漏斗の首に試験管を差し入れました。
このような装置に太陽の光りを当てると,葉から気泡が出始めました。気泡が試験管にたまるのを待って試験管を抜き,その中にかすかに燃えている木片を入れるとそれは明るい炎をみせて燃え上がりました。つまり緑の葉は光りを受けるとプリーストリーとシェーレが発見した気体(酸素)を放出していたわけです。しかし緑でない部分,枝や切り取った根の部分を使った場合は気泡は発生しませんでした。さらに暗闇では緑の葉のついた小枝からも気泡は発生しませんでした。
結局酸素を出しながら空気を改善するのは植物の緑の部分だけであって,しかも光りの下に限られていました。暗闇や薄暗い中では植物のすべての部分は空気を悪くするだけでした。
この実験結果からプリーストリーとシェーレの実験の矛盾の理由も明らかになりました。プリーストリーは明るい昼間に実験を行ないましたが,シェーレは薬局の部屋で夜間にローソクの明かりで実験を行なったのでした。
インヘンハウスは,植物は暗闇の中で呼吸し,炭酸ガスを出して空気を悪くするが,光りのもとでは呼吸作用は酸素の放出作用に変わると考えていました。。
同じ頃ジュネーヴのプロテスタント教会の牧師であったセネビエ(Jean Senebier 1742-1808)も,植物に対する光りの作用について研究していました。
彼は水草の葉からの光の下での気泡(酸素)の発生は、あらかじめ水を沸騰させて(炭酸ガスを除いて)おくと起こらないことを発見し,緑の葉は光の下で炭酸ガスを吸収して酸素を発生すること,空気の浄化は植物の栄養作用(今でいう炭酸同化,光合成)と結びついていることを1782年に発表しました。それはこの研究をひきついで更に発展させることになるテオドール・ド・ソシュールが15才の時でした。
テオドールは父オラスのアルプスの調査研究の手助けをする傍ら,物理学,化学,鉱物学の勉強をしていましたが,二十歳過ぎの頃プリーストリーやセネビエやインヘンハウスの仕事を知って非常に興味を覚えました。その結果彼は生涯を植物研究に捧げることになります。
1797年,植物組織における炭酸の生成について三つの論文を学会誌(Annales de Chemie)に発表し,これによってフランス科学アカデミーの通信会員に選ばれました。
彼は先人の研究を新しい化学分析の手法によって確かめようと考え,父の考案したユーデイオメーターを用いて実験をしました。これは目盛り付きのガラス管の封じた一端に白金電極を挿入し,他端を水銀圧力計につないだもので,電極に電流を通じ管内で起こる気体の化合による体積の変化測定し,気体の分析を行なうものです。
彼は空気に一定量の炭酸ガスを加えた混合気体を封入したガラス容器の中で,いろいろな植物を一定期間育てた後,ユージオメーターで気体の分析を行なってその変化を測定しました。また植物体を焼いて,発生する炭酸ガスの量を測定しました。
その結果彼は,光の下では炭酸ガスの吸収と酸素の放出が1対1(容積比)で起こること,炭酸ガスの吸収によって植物体の重量が増加することを明らかにしました。
さらに彼は正確な秤量の結果,根から吸収された水もその一部は分解されて体内で炭酸ガスと結合すると結論しました。
また彼はいろいろなところからいろいろな植物を集めてきて,その無機成分の分析を行ない,次のようなことを明らかにしました。
植物の無機組成は1.植物の種類によって,2.土壌の種類によって,3.植物の部位によって,4.生育時期によって著しく異なる。
植物の無機成分は根が土壌溶液から吸収したものであるが,植物体の無機組成と土壌溶液のそれとは異なっており,物は非常な選択性をもっている。
草本植物は木本植物よりも無機物の吸収量が多く,地力を消耗し易い。
テオドールはこれら一連の研究結果をまとめ,1804年に著書「植物の生長の化学的研究(Recherches chimiques sur la vegetation,Paris)として発表しました。
彼は1802年から1835年までジュネーヴ大学の鉱物学および地質学の教授の職にありましたが,終生植物生理学の研究を続けました。彼の功績は実験に基づいて,植物の栄養についての正しい見解をはじめて明らかにしたところにありますが,それは彼の行なった正確な定量的実験によって成し遂げられたものです。ここに先人たちとの違いがあります。
テオドールの師のセネビエは,かつてマムシグサの花のそばでは空気の温度が上昇することを発見し,これはマムシグサが酸素を吸収しているためであると考えましたが,テオドールは後に酸素の吸収と空気温度の上昇の間には一定の関係があることを確かめました*。
1808年以降は植物細胞中の生化学反応(発酵やデンプンの糖化など)についての論文も発表しています。彼は生涯を植物研究に捧げましたが,祖父のように農学者にはなりませんでした。彼は植物生理学の草分けとして数多くの栄誉を受け,1825年までにヨーロッパの殆どすべてのアカデミーの準会員になっていました。
前回に紹介したパリシーが波乱万丈の苦難に満ちた生涯を送ったのに比べると,テオドールの78年の生涯はまことに平穏で恵まれたものでした。彼の生れた18世紀の末期にはアメリカ合衆国の独立(1783)とフランス革命(1789)が相次いで起こり,パリシーの生きた時代にくらべて精神的自由の気風に満ちていました。
また彼が一生を過ごしたジュネーヴは,かつてカルヴィンが宗教改革の拠点にしたところであり,啓蒙思想家ルソー(1712-1778)を生んだ地であります。彼の師セネビエや「栽培植物の起源」の著者として有名なド・カンドル(1778-1841),セネビエらに影響を与えた博物学者のチャールス・ボネ(1720-1793)もジュネーヴの人です。
テオドールの功績はもちろん彼の資質によるものですが,彼の家系や生きた時代や土地柄も幸いするところがあったと思います。
* マムシグサの花は仏炎包という大型の包に包まれているが,夜になると開いてその中の肉穂花をあらわす(図2-1参照)。この肉穂花の呼吸は異常に高く,温度は30℃に達することが知られている。この熱は肉穂花の不快臭をなしているアミンの揮散を助ける。糞にたかるコガネムシの類やハエはこのアミン臭にひきつけられ,肉穂花の上に舞い下り,花の底に落ち込みそこに閉じ込められる。仏炎包の内面はすべすべしているので昆虫は逃げ出すことができず,24時間そこに閉じ込められ,その間に花粉を花柱に運ぶ役目を果たす。それから迅速な構造変化がおこり(仏炎包表面にしわができるなど),昆虫は結局解放される。肉穂花が熱を発生するのはこの植物の著しい特徴であり,糞臭を強めるのに役立っている(高橋英一,深海浩訳:ハルボーン化学生態学 文永堂 1981 57-58頁による)。

1.ミ・エ・イヴィン著 藤川健治訳編
光合成の謎 社会思想社(現代教養文庫) 1973
2.メイスン著 矢島祐利訳
科学の歴史 上岩波書店 1957
3.D.N.トリフオノフ・V.D.トリフオノフ著 阪上正信・日吉芳朗訳
化学元素発見の道 内田老鶴圃 1996
4.The New Encyclopedia Britanica vol.10 p478
JAあわじ島榎列支所
営農主任 三木 浩介
JAあわじ島は,兵庫県の南部に位置し,播磨灘,大阪湾,紀伊水道に固まれた瀬戸内最大の島である淡路島の南部,三原郡を管内としている
管内は温暖な瀬戸内海型気候を生かし,露地野菜を中心とした栽培が盛んで,野菜総出荷量が10万トンを超え全国でも有数の出荷量を誇っている。
主要品目は,タマネギ,レタス,キャベツ,ハクサイで,中でもレタスは300万ケース(1ケース・10kg)を超えるほどの出荷量で基幹作物となおり,今では,秋冬レタスで全国一の産地になっている。
レタス栽培は,昭和37年に三原農業改良普及所(現在の南淡路農業改良普及センター)の指導のもと西淡町志知で5aの試作展示を行ったことから始まり,その翌年から志知及び近隣の市,榎列地区へと栽培が拡がった。昭和40年に管内13農協が合併し三原郡農協が発足し,レタス栽培を戦力的拡大品目として育成,推進をはかった。以後,市場,行政,JA一体となった産地育成と販売対策のため部会組織の育成強化により作付面積は急速に増え,昭和50年には200haを超えた。
その後,レタスの消費の伸びとともに,重量野菜からレタスヘ移行し,価格安定制度への全量加入,営農技術の進展と販売商圏の拡大,堅調な価格推移に支えられ順調に作付面積が拡大し,平成14年には約1,200haを超える産地となっている。

さて,これだけの栽培面積になったレタスを販売していくなかで『レタスの消費動向がどのようになっているか』ということが問題になるが,今消費地では大玉(2L,L)で品質の良い8分結球,箱詰めして満杯感のあるレタスが求められてきている。これに対応した栽培をということで,近年,マルチ栽培,2条植,厳寒期のトンネル内2重被覆を栽培農家に推奨してきた。
マルチ栽培は従来から篤農家を中心に行われていたが,その有用性が全体には認識されていなかった。マルチ栽培では冬穫を収穫した後,2作目の春穫を同じ畝に植込み,それと同時に2作目用の施肥を前作の株跡に置き肥または穴肥として施肥するのがー般的であったが,2作目の施肥労力が問題となっていた。
これを改善するために秋のマルチ掛け時に冬・春2作分の施肥を行えないかという観点から淡路農業技術センターでのシグモイドタイプのコーティング肥料であるスーパーNKロングの基礎試験を経て平成8年よりJAでの展示試験を実施した。
試験は,管内のレタス栽培農家の圃場を借り区割り及び施肥をJAで行い,以降の栽培管理は農家に委託するという形で実施した。なお,JAの試験展示という意味合いから,試験圃場,委託農家は年度によって異なっている。また,施肥設計は平成8年度から11年度までは,慣行の追肥型とスーパーNKロング203を利用した省力施肥型との比較を試験①,スーパーNKロングを施肥基準に採用した平成12年度以降はスーパーNKロングとその他の緩効性肥料との比較を試験②として,それぞれの代表的な年度の結果について記載する。
試験①は平成10年秋~平成11年春にかけて,試験②は平成12年秋~平成13年春にかけて実施した。
施肥設計および耕種概要はそれぞれ表1~4に示したとおりである。




当JAのレタス栽培試験の調査方法にしたがい調査を実施した。
総重,球重,球径,球高について10株調査,階級,等級について50株調査を実施した。
なお,出荷規格は,階級は大きさ順に3LからSとA品の大,小の7つ,等級は品質の良い方から秀品,優品,A品の3つあり全部で12規格となっており,10株調査で収量,形状の評価を行い,50株調査で品質を中心とした収益性の評価を行っている。(レタスの場合収益性評価に重きを置き試験成績を評価している。)
また,試験①では栽培期間中の土壌分析としてpH,EC,NO3-Nを測定した。試験②ではマルチ内の地温を測定し緩効性窒素の溶出量を推定した。
表-5,図-1に収穫調査結果を示したとおり,1作目は天候の影響によって例年より収穫が2週間程早くなったため,1月穫の作型としては,窒素量が過剰になり両区とも球高指数が90後半となっている。したがって,結球が立ち気味で,秀品率が30%台と品質的に劣る結果となっており,慣行区との差は確認できなかった。


次に2作目についても表-6の土壌分析結果からもわかるように,窒素量が多く大玉になりすぎたため品質が低下した。しかし,土壌分析結果も示すとおり,慣行区は2作目追肥直後のNO3-Nの分析結果が86.9mgと異常に高く,その後の分析でも高い値を示し
ているのに対して,グリーン400+スーパーNKロング203区は1作目生育中から2作目植付け時まで35mg程度と安定した肥効が得られ,あまり窒素を必要としない春に向けて18.7mgと減少している。その結果が2作目の秀品率の差として表れたものと考えられる。

試験①の結果から収穫時期の前進化の影響も考慮しても,グリーン400+スーパーNKロング203区の窒素施用量は過剰であると思われた。
試験②では窒素量を43.2kgに減量し比較試験を実施した。
収穫調査結果を表-7,図-2に示したが,実施した年度は降雨が多く,また実施圃場の排水不良の影響もあり2L・L発生率20%と1作目は全体的に小玉となった。この条件下でも図-3の窒素の溶出グラフからもわかるようにグリーン400+スーパーNKロング203区は対照区に比べ,窒素溶出量が安定しており,対照区に比べ球重が重く,わずかであるが,肥大性(2L・L発生率),品質(秀品率)ともに優れていた。



しかし,1月から2月中旬まで窒素溶出量は満足できるレベルではない。例年この時期のレタスは収量性,品質が最も低下し,1月から2月の肥効確保が今後も問題となる。
次に2作目ではグリーン400+スーパーNKロング203区が中心規格である2L・L発生率が高く,肥効の安定性が確認できた。
●試験①の結果から省力施肥区については慣行区(有機配合+化成追肥)と同等以上の品質,収量を得られることが確認できた。しかし,グリーン400+スーパーNKロング203区の窒素量48kgは過剰であった。また,施肥労力の軽減として有効であることが確認できた。
●試験②では,天候条件の影響もあり小玉傾向であったが,グリーン400+スーパーNKロング203区が安定した収量,品質が得られた。ただし,図-3に地温による窒素の溶出量を推定すると,1月の溶出量が不足しているように思われた。
施肥労力の軽減,肥効の安定性等の有意性からレタス2作一発施肥体型(グリーン400+スーパーNKロング203)を導入するレタス栽培農家は年々増加している。しかし,その反面この施肥技術に対する要望も多く聞かれている。
今回の試験結果からもわかるように,最も球肥大を求められる1月から2月の低温時期に窒素の溶出量が不足する。この時期の生育を確保するためのグリーン400とスーパーNKロング203の適正な施肥量の組み合わせが求められている。
また,グリーン400とスーパーNKロング203の2銘柄を施用することによって速効性と緩効性の組み合わせを自由に行えるという利点がある反面,2銘柄を散布する労力についても問題となっている。
現在も『環境に優しい施肥』という目標もふまえて,総施用量の減肥と栽培農家の現状にあった施肥体型の模索のため試験継続を行っている。
越野 正義
人の健康にもっとも悪い影響をしている食品添加物は食塩と砂糖だという説がある。どちらも必須であるが,多すぎると害がでてくる。
肥料の必須元素でも同じようなことがある。窒素は肥料としてもっとも重要な成分で
ある。しかし多すぎると稲では食味の低下,倒伏,病害虫害の誘因になる。野菜などの硝酸集積も施用窒素の過剰(肥料+堆肥など)が最大の原因である。家畜のふん尿を多量に連用しているとカリウムが土壌に集積し,カリウムとの拮抗作用により植物がマグネシウムを吸収できなくなり,ウシのグラステタニーの原因となる。このように必須成分でも場合によれば障害の原因になることがある。
微量要素でも同様であり,銅,亜鉛は動植物に必須であるが,多量では公害元素である。カリフォルニア・サールズ湖(ホウ酸塩の生産で有名)産のトロナカリではホウ素含量が高く生育障害がみられたため,昭和25年6月の公定規格では塩化カリ中の有害成分として無水ホウ砂が0.5%以下と規定されていた(同年12月に削除)。
養分の必須性は動物と植物でも違い,植物で必須であっても動物には必要のない元素(ホウ素・モリブデンなど。場合により動物で害になる),あるいはその逆に動物で必須でも植物では必要のない元素もある(セレン・ヨウ素など)。また研究の進歩で,ニッケルのように有害元素から植物の必須元素に転換した例もある。
このように必須元素と有害元素の境目は必ずしも明確なものでなく,その存在量で必須性と有害性が分かれる場合も多い。単純に元素により有害,あるいは必須と決めることができないのである。
(財 日本肥糧検定協会 参与)